CADを使う仕事は一般的に「CADオペレーター」と呼ばれますが、ここでは「CADオペレーター」と「CADエンジニア」の2種類に明確に区別して説明します。
この記事では、そんな働き方の違いやCADを使う仕事の内容、必要とされるスキルについてご紹介します。
記事を読んでCADを使う仕事に興味が沸いた方は、後半の仕事の探し方やこの業界で求められる人物像についてもぜひご覧くださいね。
CADを使う仕事の種類と定義/キャリアプラン
まずは、CADを使う仕事の種類と定義についてひとつずつ見ていきましょう。「CADオペレーター」から、どのようなキャリアプランを描くことができるかにも注目です。
【1】CADオペレーター
CADオペレーターとは、CADソフトを使って図面を作成する仕事です。
担当者の指示に従いながら仕事を進めていきます。
後述の「CADエンジニア」のサポートを行うようなイメージです。
【2】CADエンジニア
CADエンジニアとは、実務経験をしっかり積み、自立して図面の業務が出来る人のことです。
「設計士」や「建築士」も大きな意味ではCADエンジニアに含まれます。
建築(建物)分野の設計には特別な資格が必要で、資格の名前から「一級建築士」「二級建築士」とも呼ばれます。
CADを使う仕事のキャリアプラン
CADオペレーター>CADエンジニア>担当者>リーダー(プロジェクトマネージャー)
一般的には、CADオペレーターとして指示を受けながら作図の実務経験を積むところからスタートします。
ひとり立ちして業務を行うCADエンジニアとなり数々のプロジェクトの担当者を経て、最終的にはリーダー(プロジェクトマネージャー)として自らの手でプロジェクトを進められるようになります。
CADを使う仕事の仕事データ図鑑【収入・経験・需要】
CADオペーレーターの賃金や有効求人倍率、労働時間の統計です。
これまでCADオペレーター・CADエンジニアという2種類の分け方があるとお伝えしましたが、CADエンジニアとして成長すればこの年収を見込めます。
つまり、CADオペレーター時の年収はここまで達しないと考えられます。
- 賃金(年収):全国463.2万円(近い業態他業種との比較)
- 求人賃金(月額):全国25.4万円(令和3年度)
- 有効求人倍率(令和3年度) :全国0.72倍
- 労働時間:全国169時間
- 年齢:全国41.5歳
- 学歴:大卒51.5%、高卒32.4%、専門学校卒27.9%
[出典]全体:職業情報提供サイトjobtag/CADオペレーター
[出典]賃金・労働時間・年齢:令和3年賃金構造基本統計調査
厚生労働省が毎月算出し発表している、「仕事の数」を「仕事をしたい人の数」で割った数値のこと。
- 1より大きくなるほど求人数(仕事の数)が多く、働き手が足りなくなる
- 1より小さくなるほど求職者(仕事をしたい人の数)が多く、仕事探しが難しくなる
CADを使う仕事の内容・種類
「CADオペレーター」「CADエンジニア」それぞれの仕事内容や種類の違い、やりがいや働き方についてご紹介します。
※この記事でお伝えするCADエンジニアは、意匠(デザイン)の分野を含みません。製作用の図面についての説明です
【1:内容】CADを使う仕事
【1-1】CADオペレーター
経験豊富な担当者(CADエンジニア)からの指示を受け、図面を作成します。
不明点については、適宜質問や相談を行いながら業務を遂行します。
指示通りの正確な作図を行うことが求められます。
【1-2】CADエンジニア
作図をはじめ、クライアントとの打ち合わせや質疑や仕様変更への対応、工程(進捗)管理、CADオペレーターへの指示なども行います。
作図の知識と経験、自分ひとりでも業務を完遂できる能力が必要です。
社内外の担当者としての活躍が期待されます。
【2:種類】CADを使う仕事
【2-1】CADオペレーター
さまざまなジャンルの図面を、担当者の指示を受けながら業務を行います。
得意なジャンルというよりも、どのCADソフトをどのレベルで使いこなせるかどうかが重要です。
2次元CADであれば「AutoCAD」や「Jw_cad」、3次元CADであれば「Archicad」など、一般的に使われているCADを使えると良いでしょう。
【2-2】CADエンジニア
CADエンジニアが手掛ける作図の主なジャンルは主に、土木、建築、機械、その他(プラント、の4種類に分けられます。
それぞれの具体例は次の通りです。
ジャンル | 具体例 |
土木 | 測量、道路、橋、ダムなど |
建築 | ビル、住宅(RC、鉄骨、木造など)、設備(電気、エレベーター、シャッターなど) |
機械 | 自動車、家電、工作機械、精密機械(例:ネジ)など |
その他 | プラント・造船など |
【3:やりがい】CADを使う仕事
CADオペレーター&CADエンジニア共通
CADの仕事は、すべてのプロジェクトに「ゴール」が存在します。
チームメンバーでひとつのものを作り上げる達成感は、この業界で働く人すべてのやりがいに繋がっています。
同じことを繰り返し行う事務や終わりの見えない家事とは、大きく異なるポイントです。
また、自分の仕事(成果物)がしっかりと評価されるのもこの仕事の特徴。
人付き合いの良し悪しや組織の社内政治とは無関係に、「正解を出した人」「頑張った人」が報われる世界なのです。
その評価はリピートという形で次の仕事に繋がります。
【4:厳しさ】CADを使う仕事
CADオペレーター
自分の仕事(成果物)に「正解」があるということは、当然「間違い」もはっきりと分かります。
悪い評価を受ければ、次から仕事がなくなる可能性もある厳しい世界です。
ほかにも、納期が近づくと残業が発生したり、仕事を一通り覚えるまでに時間がかかったり。
いかにミスのない成果物を厳しい納期に間に合わせるのかが重要視されます。
CADエンジニア
ひとつのミスでプロジェクト全体の計画が狂い、時間的損失だけでなく、人的にも金銭的にも大きな損害が発生してしまうのがCADを使う仕事の大変なところ。
担当者レベルで業務に携わるCADエンジニアには、クライアントからのクレームとしてダイレクトに返ってきます。
契約内容によっては、損害賠償責任を負うリスクも……。
【5:働き方】CADを使う仕事
CADオペレーター&CADエンジニア共通
1日中パソコンの前に座って、図面を書くことが仕事の大半を占めます。
プロジェクトの進行中は、図面の指示や修正、質疑などで綿密なやりとりが頻繁に必要。
そのためテレワークで仕事を行うことがなかなか難しく、パース作成以外はクラウドソーシングにも案件がほとんど出ていない状態です。
業界全体が閉鎖的で、それ故に人材不足が長く続いてしまっていると言えるでしょう。
CADを使う仕事に必要・有利な資格、スキル、経験
「CADを使う仕事」をするに必要な資格やスキル、求められる人物像についてお伝えします。
【1:資格、経験、スキル】
建物を設計する「建築士」の場合は必須で、取得すると「一級建築士」「二級建築士」として業務を行います。
建築以外のCADを使う仕事で、必須な資格はほとんどありません。
CADの資格で「CAD利用者技術者」「建築CAD検定」「オートデスク認定」などがありますが、ここで重要なのは、資格を取得したからと言って仕事を得られるわけではないと認識しておくことです。
建設業界では、資格の有無よりも実務経験を重視します。
時間とお金を使って資格取得のための勉強に励むより、いち早く実務経験を積むことを優先しましょう。
【2:求められる人物像】
ミスのない成果物を納期に間に合わせることが大切な、CADを使う仕事。
この業界で求められる人物像をピックアップしてみました。
- ひとつのことを集中してコツコツと継続できる人
- 間違いのないものを追及するのが好きな人
- 職人的な仕事なので、学ぶこと、極めることが好きな人
- プロジェクトとしてひとつの物を作るので、チームワークも大切にできる人
あなたはいくつ当てはまっていましたか?
【3:他職種からの転職事例】
CADを使う仕事は数字を扱うことも多いので、「理系出身者が向いている」という誤解をしている方がいらっしゃいます。
しかし、意外にも文系出身者が多数を占めており、中途採用で業界に入って来る方も珍しくありません。
CADを使う仕事の探し方とキャリア形成
ここまで読んで「CADを使う仕事に興味が沸いた」「CADを使う仕事をやってみたい・続けたい」という方は、実際に仕事を探してみましょう。
ここからは、仕事の探し方やスキルの身に付け方についてご紹介します。
【1:CADを使う仕事の探し方】
CADの仕事の経験や少しでもCADに触れたことがあるなら、まずは経験したジャンルで探してみるのが早く仕事が見つかりやすいです。
即戦力として評価されやすいからです。
ジャンルである程度絞れたら次に、自分が使えるCADソフトで探してみてください。
建築士の場合は、好みの建築デザインや方向性の会社を探してみると良いでしょう。
【2:CADを使う仕事のキャリア形成】
CADを使う仕事は、CADソフトだけをマスターすれば良いという訳ではありません。
文書作成・表計・画像加工なども覚える必要があるため、PC全般の操作が業務を通して身に付きます。
そのため、一通りの作業を自分で行えるようにさえなれば、PCとプリンターだけで独立できるのもCADを使う仕事の特徴と言えるでしょう。
仕事を通して成長(ステップアップ)したい方には最適ですね。
サマリー:CADを使う仕事|種類・内容、持つと有利な資格やキャリア形成のポイント
ここまで、CADを使う仕事の種類や内容、持つと有利な資格やキャリア形成について詳しく説明してきました。
CADを使う仕事は、成果物としての「正解」をチーム全員で追い求めながら、完成したときの達成感を味わえる素晴らしい仕事です。
人材不足が続いている建設業界ですが、今回の記事を読んで、このやりがいのある仕事をひとりでも多くの方に選択してもらえればうれしく思います。