BIM/CIMエンジニア・オペレーター

BIM/CIMエンジニア・技術者の仕事内容・収入とキャリアプラン

BIMCIMエンジニア

この記事では、BIM/CIMエンジニア・技術者の仕事内容や年収をはじめ、必要な資格やキャリアプランなどを解説しています。

「BIM/CIMエンジニア・技術者」と「BIM/CIMオペレーター」は通常区別されません。

しかし両者の違いを理解することで、目指す年収やキャリアプランが変わってくるため、ここでは区別して話を進めます。

より理解を深めていただくために「BIM/CIMとは」の説明から行いますので、参考になれば幸いです。

参考記事

オペレーターとエンジニアの違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています(違いはBIM/CIMもCADと同様の考え方です)。

BIM/CIMとは

BIM/CIMとは、建築・土木分野の品質向上や生産性向上を目的として、BIM/CIMモデルを製作・活用・管理する取組み全体の事を言います。

具体的には、構造物などの3次元のBIM/CIMモデルを計画や設計段階で構築し、施工・維持管理のプロセスにおいて、必要な情報を追加しながら一元的に管理し、活用していくことです。

それによって生産過程の効率化を計り、将来の人材不足にも対応していくことを目的としています。

BIM/CIMモデルを構築するとは、ざっくり言うと「構造物や地形を3次元モデル化して、属性情報を追加する」と捉えておくと分かりやすいでしょう。

用語解説
  • 2次元モデル
    これまでの2次元図面と異なり、構造物などを立体的に表現した情報です。「3Dモデル」とも呼ばれますが、単純に3次元モデルと呼ぶ時は属性情報を含んでいません。
  • 属性情報
    3次元モデルに付け加える情報で、部材の名称や寸法、重量や強度などたくさんの情報を、一つずつの部材、部品に定義することができます。

ここでは、そんなBIM/CIMモデルを構築する人をBIM/CIMエンジニア・技術者と呼び、その仕事内容や年収をはじめ、必要な資格やキャリアプランなどを詳しくご紹介します。

BIM/CIMエンジニア・技術者の仕事内容

まずは、BIM/CIMエンジニア・技術者の需要や仕事内容を見ていきましょう。

BIM/CIMエンジニア・技術者の需要

これまでの建築物や土木構造物の設計は、2次元(2D)図面が一般的でした。

技術の発達により2010年代には3次元(3D)CADが広まり、3Dモデルに属性情報を加えたBIM/CIMが登場したのです。

国土交通省は緊急事態宣言中の2021年4月、「2023年度までに小規模を除くすべての公共工事において、BIM/CIM原則適用に向けて段階的に適用拡大を目指す方針」を打ち出しました。

これは、当初2025年としていた方針を実質2年前倒ししたものです。

このようにBIM/CIMの導入が急がれる一方で、圧倒的にBIM/CIMエンジニアが不足していると言われています。

下記の国土交通省が公表した「令和3年度のBIM/CIM実施⽅針、件数の推移 」を見ても分かるように、BIM/CIMの工事件数は急激に増加しており、建設・土木業界の大きな転換期を迎えている事が分かります。

今後、高度成長期に造られたインフラの老朽化への対応、という課題を抱えるこの国において、BIM/CIMエンジニアの需要はますます高まっていくことは間違いないでしょう。

国土交通省資料参照:国土交通省BIM/CIM推進委員会資料

BIM/CIMエンジニア・技術者の仕事内容

BIM/CIMエンジニア・技術者の仕事内容は、3次元モデルの製作と属性情報の入力です。

3次元モデル入力の工程には以下の3パターンがあります。

1計画・設計を最初から3次元でモデリングするケース
これはBIM/CIMソフトを扱える設計者の仕事です。設計業務が出来る人が今後2次元図面を書かずに最初から3次元図面で入力するということは増えて行くでしょう。
2設計は2次元で行い、2次元データから3次元モデリング化するケース
BIM/CIMエンジニアの仕事としてのメインは、2次元データから3次元モデルを製作することです。2次元で書かれた設計図を基に、より早くより正確に、3次元モデルを入力することが求められます。3次元モデルを入力することで、時には、設計図の間違いに気付き、フィードバックすることも大事な仕事です。
3既にある3次元のBIM/CIMモデルに追加するケース
設計段階で製作された3次元モデルは一元的に管理され、それぞれの施工段階において、施工用の部材や部品が追加入力されていきます。

BIM/CIMエンジニア・技術者の年収・給料

気になる年収・給料ですが、BIM/CIMエンジニア・技術者として公式に発表されているデータがまだありません

実態も近いと推測されるため、参考までに下記2つの職業データをご紹介します。

エンジニア年収  [BIM参照元]厚生労働省職業情報提供サイト(日本版O-NET)
[CIM参照元]厚生労働省職業情報提供サイト(日本版O-NET)

BIM/CIMエンジニア・技術者のやりがい・魅力

BIM/CIMエンジニア・技術者のやりがいや魅力をご紹介します。

【1】社会に求められている

近年急激に広がり始めたBIM/CIMは、今、世の中に求められている仕事です。

国土交通省が「2023年までに小規模を除く全ての公共事業にBIM/CIMを原則適用」を決定したこともあり、今後ますます重要な人材となるでしょう。

【2】仮想体験が面白い

BIM/CIMソフトウェアを使って立体を作り上げ、まだ存在しないものがまるでそこにあるかのように描かれる「仮想体験」がとても面白いです。

また、BIM/CIMエンジニア・技術者は3Dモデルに素材や色、重さ、点検結果などの情報(属性)を入れていく作業も行うため、2次元図面とは違い、リアルにものづくりを実感することができます

2次元図面から立体を想像するのにはかなり訓練が必要ですが、3次元モデルならその必要がなく、初心者でも一目で理解できます。

【3】転職に有利

2次元ではなく3次元が使えるかどうかが、転職市場では武器になります。

中でも、将来的に必須になると想定されるBIM/CIM。

現状では、「一歩リード」と言えるでしょう。

BIM/CIMエンジニア・技術者のつらい・大変なところ

これまでのCADオペレーターに比べて、需要も高まり、やりがいも感じられるBIM/CIMエンジニア・技術者の仕事。

一方で、まだ新しい仕事だからこその大変な点もあるようです。

BIM/CIMエンジニア・技術者のつらい・大変なところを3つご紹介します。

【1】学ぶ難しさ

BIM/CIMを学ぶ難しさが2つあります。

一つは、実務に即した研修をする機関が非常に少ないこと。

もう一つは、周りに熟練者が少なくて、わからないことを聞けないこと。

もし、あなたの回りに熟練者がいれば、とても恵まれた環境だと言えるでしょう。

【2】英語力が必要

海外製のソフトウェアが多く、日本語の情報がまだまだ足りていないBIM/CIM。

ネットで検索しても、日本語では欲しい情報がなかなか見つからなかったり、本で学びたいと思っても、英語の本しかなかったりします。

そんな時、英語力があれば、、、と身にしみて感じます。

英語が話せる必要はありませんが、読めて理解できると有利です。

【3】ソフトが高額

BIM/CIMの代表的なソフトの金額を後述していますが、とても高額です。

個人で勉強しようと思っても、気軽に購入できる金額ではありません。

個人事業主や小さな会社でも、新しく取り組んで仕事を取って行こうとするには難しい状況であると言えます。

BIM/CIMエンジニア・技術者に必要な資格・スキル・経験

BIM/CIMエンジニア・技術者に必要な資格や、求められる能力や経験についてご紹介します。

現状、必須資格はないが今後の国の方針は注視

CADの資格同様、現時点でBIM/CIMエンジニア・技術者になるために取得が義務づけられている資格はありません

しかし国土交通省の発表資料には、次のような記載があります。

BIMを活用した建築生産、維持管理を効率化するとともに、中小事業者が円滑に導入可能となるよう、BIMマネージャーや技術的な資格制度、人材育成などを進める。

[引用]建築BIM/CIMの将来像と工程表(案)修正版

近い将来、「BIM/CIMマネージャー(仮称)」「BIM/CIM技術者」といった資格が必要となる可能性もあります。

3DCADのスキル

現時点で資格は不要とは言え、3次元で立体モデルを作るスキルが必須です。

ソフトのスキルだけでなく、入力したモデルが正しいかどうかを判断する知識や経験も必要です。

代表的なBIMソフト

【BIM】会社金額(年間)特徴
RevitAutodeskアメリカ427,900円オートデスク社のBIMソフト

日本国内の設計事務所やゼネコンで高いシェアを誇る

ArchiCADGraphisoftハンガリー924,000円世界初のBIMソフト
GLOOBE福井コンピュータ日本650,000円日本の建築基準法や設計手法に対応

 

代表的なCIMソフト

【CIM】会社金額(年間)特徴
AEC CollectionAutodeskアメリカ522,500円AutoCADがベース

最もシェアが高い

TREND-CORE福井コンピュータ日本660,000円2次元の操作感で使用できる

VR機能を搭載

v-nasClair川田テクノシステム日本99,000円に各種オプションをプラス土木コンサルのシェアが高い

プログラミングスキル

BIM/CIMモデルを作成していると、自動化が必要な場面が出てきます。

BIM/CIMソフトウェアには、作業を効率化させるためのプログラミングツールが付属されているものもあり、プログラミングのスキルがあると重宝されるでしょう。

技術を学べるスクール・資格試験の勉強

前述の通りBIM/CIMはまだ新しい技術なので、ネットで調べてもノウハウ的な情報が少ないのが現状です。

また、ソフトも高額であるため、ソフトのライセンス付きのスクールに通うのが得策と言えるのではないでしょうか。

BIM/CIMエンジニア・技術者のキャリアプラン

では実際に、BIM/CIMエンジニア・技術者を目指すにはどうすればよいのでしょう。

2通りのキャリアプランをお伝えします。

【1】最初からBIM/CIMエンジニア・技術者を目指す

建築学科に通っている学生は、最初からBIM/CIMエンジニア・技術者を目指すことが可能です。

「最初から目指す」と言っても、BIM/CIMのソフトウェアのスキルだけを身につければよいという訳ではありません。

BIM/CIMエンジニア・技術者も2次元の図面を読むスキルは必須なので、そこは基本的な部分から勉強して身につけておきましょう。

図面の知識がないと、ただただ上司の指示に従うBIM/CIMオペレーターになってしまいます。

【2】CADエンジニア・技術者からBIM/CIMエンジニア・技術者を目指す

現在CADエンジニア・技術者として働いている方や経験がある方は、BIM/CIMのソフトウェアを覚えさえすれば、BIM/CIMエンジニア・技術者になることができます。

おかの
おかの
BIM/CIMエンジニア・技術者になるには、CADエンジニア・技術者からのステップアップが一番の近道です。BIM/CIMオペレーターの求人の多くで、CADオペレーターの実務経験を必須としています。 

サマリー:BIM/CIMエンジニア・技術者の仕事内容・収入とキャリアプラン

ここまで、BIM/CIMエンジニアの仕事内容や収入、必要な資格や学習方法について詳しくご紹介してきました。

国土交通省の「公共工事におけるBIM/CIM原則化」の発表により導入が急がれるBIM/CIMは、今後ますます需要が増えそうです。

建築、土木学科の学生さんやCADエンジニアとしてのスキルをお持ちの方は、ぜひBIM/CIMエンジニア・技術者を目指してみてくださいね。

今回の記事が、BIM/CIMを使った仕事を考えている方のヒントになれば幸いです。